成功するための要点

 

飛躍への休み

蓄財(3)    (林 輝太郎の売買上達セミナー 147・連載 )

○.増え方は階段的
 われわれが相場をやるのは、とにかく十数年か数十年、それも20年か30年のうちに10億円、せめて5億円という個人で「資産」といえるくらいの利益を積み重ねたいからである。

 その積み重なり方は、次第に右肩上がりの一直線ではなくて階段みたいな増加のし方なのである。
「株を長期に保有し、大きな売却益を得るやり方ならば段階みたいな増え方になるだろうが、うねり取りのようなやり方では、少しずつ増えていくのだから途中で損失になったときは凹むが、大筋ではゆるやかな右肩上がりが続いていくのではないでしょうか」

 そのとおりである。しかし、現実の相場の実践ではそう感じないのである。
たとえば500万円で始めたとする。次第に利益が積み重なって、600万円、800万円となっても、「500万円の資金を動かしている」という気持ちが続いている。
「続いている」でも「残っている」でも、とにかく頭の中は500万円の運用なのである。

 まして、資金に余裕を持ち500万円の資金でも実働資金は300万円くらいという控え目(それが利益を生む源泉なのだが)の運用をしているのだから、どうしても「500万円の資金を動かしている」という意識が抜けないのである。
 そして、この「呪縛」(精神的、心理的な縛りつけ)みたいな意識から抜け出して飛躍するには、やはり「区切り」をつけること、「休み」を入れることなのである。
 
○休みこそ飛躍のステップ
 筆者が1988年4月から5月にかけて、持ち株のすべてを売り、89年6月26日からカラ売りをはじめるまで1年1ヵ月の間休んだのは、天井を模索していたのだから、いまここで説明する休みとは種類(目的)の違う休みなのだが、90年からの暴落にひっかからず逆に大儲けしたのは、やはり区切りをつけ休みを入れて冷静になれたからなのだ。ただ、意識の変革という面では同じであろう。

 飛躍のための休みは、残像の払拭であり、ワンステップの上昇であり、自身の向上であり、成功への階段を昇ることで自分自身にとっては貴重なものなのである。新しい出発点に立つための休みは、経験のない人には絶対にわからない。未知の世界だからだ。
 また個人的なものなので人によって違うが、典型的な例を示しておきたい。
 まず休みの期間。3ヵ月か6ヵ月は必要であろう。少なくとも「利益を得た。資産が増加したという興奮」が完全に収まる期間が必要なのだ。人間であるかぎり、程度の差はあれ興奮する。興奮よりも、ひと仕事終わったという安堵感で充実するといってもよい。
『うねり取り入門』(同友館刊)の本を読んで実行した人から「生まれてはじめて、もちろんわずかな利益ですが、自分の力で利益を得たうれしさのあまり寝られませんでした」という手紙が来た。

 この人は、いままで損ばかりしていたのが、利益を得られた、それも自分で努力して得た利益なので、うれしくてしょうがないのだ。
 まして1,000万円が2,000万円になったら、誰でももう1億円、10億円は目の前だという気分になるはずである。
 それを気分でなく着実な第1歩にするための休みでありながら、うれしさ、興奮を静めるのだからたいへんなのである。  

○ひとまわり人間が大きくなった
 旅行に行くのがよいという人がいる。それも夫婦で行くと話し相手がいるし、旅先で名所にも寄れるし、名産品を食べたりして相場のことを忘れられる。1週間で帰ってきてしまったら、こんどは映画か芝居でも見に行って遊んでいればよい。
 また、家の中の大掃除をしたり、カーテンを新しく変えたりするのも気分が一新できるという人もいる。カーテンを変えると、ではソファーや食卓も…となって次から次へといくらでもすることが出てくるだろう。
 そして、いよいよ3ヵ月か6ヵ月の休みの終わりが近づいてくると新しい出発、さらなる飛躍のための準備にとりかかる。
 その「相場の世界への戻り方」はそれこそ次第次第に闘志がわいてくるという感じなのだが、これから大儲けのさらなる夢ではなく、力強く、自分がいままでより高い階段からの出発、それも浮ついたものでなく、着実に地に足がついていると自覚できるものなのである。
人間としても落ちついて、他人が見てもすぐわかるくらいなのである。だが、その一段と高い出発点は、低い段階で想像していたものと全く違うもので、なってみてはじめてわかるのだ。

 たとえば、筆者のところの会員で、いまプロになって生活している人がいるが、そのことを話してくれた。
「会社の帰り、あるホールの株式講演会から出てきた人の中に知っている人が何人かいたので、一緒にコーヒー屋に行きました。
 しかし、みんなと話しが合わないのです。自分が質の違った投資家になったからだ、とわかって驚いたのは数日後なのです」(林 輝太郎の売買上達セミナー 147より )



旭洋子先生の成功するための要点

 ① 株式投資で生計をたてよう、たてられたらと考えておられる人たちは、利益を得ながら、生活費を抜いて行こうとしては絶対にいけません。
 投資を始める前に、まず1年間に必要な金額を少し余裕を持ってプールしておきます。
 そうすることによって心に余裕が持て、焦ることなく、冷静に判断することができ、安心して投資に臨めます。それが成功に繋がる第一歩です。焦燥感を持ち、追い立てられるような気持ちで臨むようでは、決して成功はしません。
 

②運用資金は、途中で増減しないことです。
 1年を過ぎ、玉帳を締めた際に、利益からまた1年分の生活費を抜き、別にプールしておきます。残りの利益と最初に準備した運用資金をプラスした金額が、今年1年の新たな運用資金となります。これを毎年繰り返します。
 以上を続けて行けば合理的に財産を築くことができます。
 

 ③大切な資金を運用しているのですから、 自分が会社の経営者になったつもりの覚悟で臨まなければなりません。絶対に倒産させることは許されません。いつも、理性を正しく持って冷静沈着に、慎重に対処するよう心掛けることです。

 勝とうとは思わず、負けないように努力することこそ肝要なのです。勝つということと負けないということは、同じではないかと思われるかもしれませんが、それは大違いです。

 相場で勝つということを目標にするのは、投機本位の気持ちの表れで、一攫千金を狙った考え方の要素を多分に含んでいます。しかし、負けないということを目標にする場合は、失敗をおかさないで、コツコツと一つずつ慎重に対処して行くという、実業家精神の表れで、初めから防御の気持ちを目的にし、攻撃が目的ではないのです。
「勝負!」という投機的な気持ちは、運百パーセントの偶然的結果を望む人為的危険を自分でおかすことになります。
 株式投資には必然的に、ある危険を多分に含んでいます。だからこそ、勉強をし、相場の原理を理解し、正しい投資法で臨まなければなりません。よくよく心すべきことだと思います。
 

 ④「休むも相場」
 株式投資で利益を挙げるには、
   上げ相場でとる
   下げ相場でとる
の二つであることは、充分に理解していただけたと思います。

 区切りをつける大切さも述べました。上げ相場であれ、下げ相場であれ、のべつまくなしに年中ドタバタと売買を続けるわけではありません。とれると思う時だけ、そのチャンスに乗るのです。
 例えば、大天井の過熱状態の時などは、早めに利食い手仕舞いをした後、しばらく休んで傍観するのです。休むと言っても、大切な作業まで休むのではありません。売買を休むだけです。作業は一日たりとも怠らず、次のチャンス到来を窺うのは言うまでもないことです。

 休むことは、休養をとるだけでなく、損をしないですむ大切な事項です。なぜなら、何もしないでいれば損の仕様がないからです。
 わざわざ火中の栗を拾うことはありません。

⑤「見切り千両」
自分の建て玉が、相場の流れに逆らっていたら、さっさと損切りをして手仕舞いをしなさい、ということなのですが、それがなかなか難しいのです。人間誰でも損を嫌います。当然のことです。「もう少し我慢すれば、そのうちなんとかなるだろう」と、希望的観測をしてしまい、なかなか自分の非を認めようとしません。というよりも、認めたくないのです。それでは、いつまでたっても上達しません。損はますます膨らんでいくばかりです。
 例えば、A銘柄を1,000円で買ったとします。思惑違いで下降相場になり600円に下がってしまった。まだまだ下がりそうな気配なので思い切って、売却の手仕舞いをする。400円の損金を出したが600円は戻った。どうしてもA銘柄を持ちたい(利口ではありませんが)、どんどん下がって、どうやら底をついたらしく300円になった。それで300円で買ったら300円手元に残り、A銘柄も戻った。
 このように考えるほうが、いつまでも引かされた銘柄を持ち続けるよりも、少しは利口でしょう。それがA銘柄でなく、他の上昇に転じそうな銘柄を買ったなら、なおのこと、もっともっと有効であるということです。このように柔軟な頭に切り換えることも大切な心得の一つです。(旭洋子)




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