サヤ取り伝書


☆自分の建玉法を辛抱強く続ける
 専門銘柄の売買に慣れ自分の建玉法が決まってくると
利益の出し方も決まってくる。
 そうなった後は、自分の掴んだ建玉法を辛抱強く続ける。
 さらに上手になろうとか、他の流儀を取り入れて
利益率を上げようとしない。
 そういうことをすると、苦労して身につけた自分の型、水準、能力を破壊する。(うねり取り入門p283)

☆高級品・稀少品的価値の原理
 上げ相場においてアサヒ-キリンを行うのは、好景気で高級品が10%値上りするのに対し、下級品が5%しか値上りせず、高級品はますます高くなりやすいという原理によるものである。
 稀少品的価値についても同様の原理が働く。

☆サヤ取りの優位性
 サヤ取りは、本玉とツナギ玉を同時に建てることによって、相場のリスクを低減、消滅させる防衛的な相場戦略であり、手仕舞いでは利益と経費が同時に発生する。
 株でサヤ取りをするのは、ごく一部の人で、プロのサヤ取り屋と裁定ファンドである。プロのサヤ取り屋は資金を年2割から4割程度に運用して生活している。サヤ取りのプロは慣れによって銘柄の特性を把握し、サヤの変動を重視し、無理はしない。
買うと同時にどこかで売るから大きな損失が発生することはない。
 株や商品の片張りでは長期的思惑が行われ、その過程では大きな失策がつきものである。売りと買いを逆にやれば大きな損になり、2回のうち1回が利益になっても通算では損になりやすいから恒常的に利益を確保するのが難しい。
それに対して、サヤ取りは利益と経費が同時に発生するため区切りをつけやすく大きな失策をする危険がほとんどない。

 「株の片張りでは銘柄を固定し、「区切りをつける」やり方をしないと儲からないが、サヤ取りは、こうした区切りを自然につけることができるから、恒常的に利益を確保して生活できるし、金が余れば株が買える。」と繊維サヤ取りの成功者Kさんは言っている。
 サヤ取りはローリスク・ハイリターンであり、サヤ取りの危険率は片張りの2分の1以下だが利益率は片張りと同等以上である。
安全だからレバレッジを効せて枚数を増やし利益を多くすることもできる。
このような優位性があるからサヤ取りで財産を築いた成功者は多い。

☆サヤ取り上達のコツ
 上達の最短距離は「単純化と繰り返し」である。恒常的に利益を確保していくためには、同じ銘柄、同じ方法で繰り返し売買する積み重ねが必要である。
 大儲けの夢を見て破産する、または一生見果てぬ夢を追って死んでゆく人は多い。
 若い独身のときは失敗しても、気力も時間もあるから再起ができる。
が、歳を取ると再起は難しいから、家族のことも考え、落ち着いて売買する必要がある。サヤ取りはそうした「思惑を排除した確実な利益を積み重ねる売買」なのである。
 ショパンの難曲を上手に弾くには血が滲むような練習が必要だが、単に売りと買いの組み合わせで、はじめからツナギの玉を建てているサヤ取りはピアノを上手く弾くのとは比較にならないほど簡単である。
 サヤ取りにおける努力とは辛抱することだけである。簡単だがマラソンのように考えながら走る。失敗の少ないやり方で長続きすれば利益が積み重なって大きくなれる。

焦ることなく「サヤ取りは自分の仕事だから徐々に上手になろう。そして上手になってきた」と自分にいい聞かせながら「真剣に落ち着いて」やるべきである。
 利益を得ることができて成功しているのに、もう少し待てばもっと取れたとか、利益が少ないと考えるのは、あまりに欲が深すぎるといえよう。
 
 相場は目移りしやすく、他のやり方が儲かりそうに思えるが、どのやり方でも利益率はほとんど変わらない。相場においては努力・辛抱に比例して利益が積み重なるものである。
 サヤ取り上達のコツは単純化と反復であり、単純なことは独力でできるから、特に人に聞く必要はない。 サヤ取りは最初からプロと同質の売買ができ、片張りの投機売買とは比較にならないほど危険性が少ないから、正しいやり方で進めば、ほとんど損をすることがない。仮に失敗しても、サヤには回帰性・循環性があるから大きな損をせずに逃げられる。
 相場感覚には変動感覚と比較感覚があり、音楽における音感、スポーツにおける運動神経に当るものである。片張りは変動感覚が重要で、厳しい体験を重ねて技術として掴まねばならず、身につけるのが非常に困難であるのに対し、サヤ取りは技術的要素は少なく常識的な比較感覚があれば変動感覚が多少鈍くても出来るから易しいのである。
 ただ、成功するには辛抱強く続ける根気が必要である。大きな損をしなけれは長続きするし、積もる利益は大きい。辛抱強く続けていくうちに確実な利益を積み重ねてソロスのように次第に大きくなれるし、飛躍するチャンスがくる。

☆分割売買
 サヤ取りの危険率は片張りの2分の1以下であるが、分割売買をすることで、さらに安全性と利益率を高めることができる。分割売買は緊張をほぐし、資金に余裕を持たせるから、心理的に有利で、売買の密度が濃くなり上達していく。
サヤの拡大が最高に達するときの「感じ」「ブレ」、サヤの動きが止まるときの前兆、それまでの違った動きを自分なりに受け止め、分割売買ででサヤの平均値を有利にしてゆくことが大切である。サヤの周期は10日程度だから、1日のうちに5分割で50-50を仕掛け終わっても当然である。
 サヤ取りの乗せは多少追っかけ気味でも、サヤの値動きには反動があるから意外と不利にならない。利益率の最高記録を作ったT氏の売買の特徴は乗せを主としたやり方であった。

☆区切り・手仕舞い
利益になると、「もう少し」と思うものだが早目早目の利食いがいい。
  「もう少し」と欲張ると失敗するので、早い手仕舞いを心掛け「儲けるくせ」をつけることが大事である。
 大きなポジションになっている時は、早めに手仕舞いを開始すべきで、半分ぐらいは早めに手仕舞って残りをゆっくりする。
サヤの変動幅全部を取ろうとしない。全資金でサヤの最高で仕掛け、サヤの最低で手仕舞いしようとすれば、一発必中の危険な当て物と同じになってしまうからである。
 いくら安全なサヤ取りであっても、儲けたいという欲で、資金目いっぱい仕掛けてしまうと、自分を窮地に追い込むことになるから資金の2分の1~3分の2に止めたほうがよい。

☆サヤの変動・周期
 相場の上げ下げの行方定めぬ値動きとちがって、サヤの変動は周期性があって取りやすいから「当てもの的要素」は少ない。サヤの変動は値動きと共に呼吸するように動いており、一過性のものではなく、継続的なものである。 サヤの開閉の原因は不明だが、開閉には周期、流れがある。
そうしたサヤの呼吸、流れを見て仕掛けてゆく。
 異銘柄のサヤも規則的な変動をしていくものである。 同種異銘柄商品の値動きの「ちがい」は根本的な違いではなく、ズレ、タイムラグというもので、それがサヤの拡大や縮小となって現れる。
 異銘柄のサヤ取りは関連のある銘柄のほうが理解しやすく、やりやすい。例えばカメラ株としてキヤノン-小西六。化学株として小西六-呉羽化学。小西六を消去して、キヤノン-呉羽化学のサヤ取りが成立する。

☆個人でのサヤ取り資金
 自分の努力と技術でリスクを取り成功を勝ち取るための資金は、余裕を持って2000~3000万円である。最低でも1000~2000万円必要である。
しかし、この程度の元手で生活できる有利な仕事はあまりない。
 個人で大きなサヤ取りをやっている人の資金は2千万円。プロでも2億円どまりである。(s45年カナダのS氏 5000万円 s42年ゴムサヤ取りのプロ 4000万円)
(林輝太郎先生のサヤ取り教科書より)



  相場戦略研究所 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1289/