二人の新宿将軍

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大相場師、浜野茂は白銅将軍という異名を取ったことで有名である。

5銭利が乗ったら、利食いする短期勝負が得意だった相場師 と思われがちであるが、
林輝太郎先生の松辰遺稿「相場の道」によれば、
松村辰次郎の子息、忠次郎氏が中学2年の時、浜野茂宅に訪問した際、直接、白銅将軍の謂れを尋ねた話が出てくる。

浜野茂は 
「商内をする時は本隊と別働隊の2つに分けて商内を始める。
本隊は大勢張りで進み、別働隊は小掬いで売買する。
その別働隊のツナギ売買で本隊の本玉をコストダウンして有利に売買するのだ」 と答えたという。

大儲けする大相場師の実態は、ツナギを駆使した緻密な売買を行っていた という貴重な話である。そうでなければ相場で大勝ちするのは難しいだろうな と思う。

浜野茂は大儲けし、新宿の大名屋敷跡3万6千坪を買い占め、豪邸を建て新宿将軍と呼ばれた。賓客を招いて自宅で鴨猟を楽しんだいうから強烈である。

しかし、政治家 後藤象二郎におだてられ、国益のため米相場の沈静化に協力して大損し、新宿の豪邸を友人の松村辰次郎に譲渡する羽目になった。
浜野茂は色紙に
「わが好きは馬に女に花かるた 相場博打はいうまでもなし」 と書いたという。
格好いい相場師だね。

当時、松村辰次郎は絶好調で、やはり新宿将軍と呼ばれたようだ。
しかし、好事魔多し。米相場で買占めに失敗し落城。
浜野茂から譲り受けた新宿城を手放す羽目になる。

この二人の新宿将軍は意外に短命で浜野茂が62歳、松村辰次郎は63歳で没している。
俺は相場師のスケールでは足元にも及ばないが、生き比べでは二人の上をいけるかもしれないと、ほくそ笑んでいるのである。

人間、浮かぼうと沈もうと大した差はない。(津本陽




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