遠藤四郎 の投資哲学

 低位の小型株を千株もしくは五千株ずつ静かに仕込んでゆき、大出来高で値上がりした時に売却する。これを繰り返して成功してきた。

 株の世界では自分なりの投資哲学を持たなければ生き残れない。
株は生き残りゲームであり、生き残ることが勝ちにつながる。生き残っていれば、いつか儲けることができるのだ。
 生き残りのためには背伸びをせず、己の分際相応のポジションを守り、長期難平戦術*、分割売買、資金に余裕を持つ等、安全を重視する姿勢が大切。

 株は不安との戦いであり「いかに自分との戦いに勝つか」である。
 だから、枕を高くして寝られること、つまり安心して持っていられる自信のある銘柄を選択して所有することが最重要なのである。

 そうすることで大量の株数を長期間 所有でき、大きな値幅を得ることにつながる。
 株式投資には忍耐が必要である。売りたい気持ちを抑えて1.5~2倍で利食いできるチャンスを待つ。

 株式投資は株数を増やすゲームである。
 株は資産であり、集中投資で所有し、株数を増やしていくものである。
株は本来、安全な資産であり、その証拠に年金、生保、損保、銀行がもっとも株を持っている。

 大暴落後の誰も手を出さない安い時が株を買うチャンス。底値圏は小動きで値動きは止まっているに等しいから、そういう時に買う。安い時に買い続け、株数を増やしていくことが大切である。
 多くの株数を買うときは、三ヶ月から半年かけて、指値をしてじっくり買いあがる。
そして、3、4年サイクルの経済拡大の波に乗って資産を増やしていく。

 いくら大暴落があっても株数だけは絶対に減らない。株数を増やすことにより、値上り効果は極めて大きくなる。

*長期難平戦術とは、難平の時期を半年先、一年先に置き、資金の半分を確保しておくことをいう。

○銘柄選択条件
 不人気のあまり売り尽くされ、もう売る人はいないという所まで下げ、
それでいて腐っても鯛という銘柄。
 売り尽くされた銘柄は上昇スピードが早い。そうした銘柄を買えば、枕を高くして寝られ、安心していつまでも所有していられる。

 素性がたしかで含み資産があり、将来立ち直る見込みがあり、万が一にも倒産しない銘柄。
倒産さえしなければ、株価は大きな循環を繰り返すものである。
 優良な不動産資産を持っている、
 安定した収益構造を持っている、
 1年先、2年先に上昇すると確信できる、
 素性がたしかである 等、
しっかりとした裏付のあって値が安い銘柄を買い、信念を持ってじっくり所有する。
 株価の故郷は額面の50円だから、額面に近い銘柄が好ましい。

○注意事項
 株式市場は決して自分の都合のいいようには動かないから、暴落に見舞われても大丈夫な余裕資金で株を買う。
 5年物の定期預金は1年物に比べ、それなりの金利を生む。同様に5年物の定期預金のつもりで株を所有すれば、その間に株価は概ね2倍、3倍という動きをするものである。だから、期限の制約がない資金を使えば大概2倍以上で売ることができる。

 株の売り時は大出来高の適当なところで売っておく。大量の株数を所有していると、暴落が来た時に売ることができず、下げを眺めているしかない。
 株は勝負の世界である。勝利間違いなしと思われる場合でも、勝負事は往々にして最も大事な天王山で敗れることがある。

 勝ちが続くと心に隙が出て、安易にもっと大きく稼げそうな銘柄・方法に飛びついたとき、大失敗しがちである。だから、わからないもの、慣れていないものに手を出さない。
 事業を急拡大した銘柄には注意が必要。
 新興不動産会社、住専、ノンバンク、銀行がそうであった。
 流行株、テーマ株は絶対買わない。
 高値覚えで買わない。
 資産がない銘柄は避ける。

 売った後は3ヶ月は休んでから、次の銘柄を買うべきである。お金を休ませることで、はやる心を沈静化することが必要。
相場の世界は、入ったら破産するまで抜け出すことができない魔力があるから、せめて 休み を取らなければならない。
(遠藤四郎著『株でゼロから30億円稼いだ私の投資法』より)


書評:『株でゼロから30億円稼いだ私の投資法』(渡辺幹夫 2007.07.31)

 遠藤氏の投資法は、一言で言えば低位株の個別銘柄への集中投資。値上がりしたら売って別の低位株を、また集中買いする。これを繰り返し、所有する株数を増やしていくという方法。徹底的に所有する株数にこだわる。
 銘柄分散は、運用資産1億円を達成する過程においてはしていない。
少なくとも、個別リスク回避のための「意図した銘柄分散」は行っていない
(ただし、運用資産1億円達成後は、複数銘柄に投資している)。

 以下、遠藤氏の運用パフォーマンスを確認するため、著書の前書きを抜粋引用する。
 社会人として、某大手銀行の銀行マンをスタート台にして、今日までおよそ35年が経過した。その間私は、株式投資というものに興味を持ち、サラリーマン、自由業の傍ら、「所有」の意識を重点にして約30年間に渡り、株式の売買を行ってきた。
 その間の株式投資における実績を申し上げると、初めて投資をしたときの投入資金は15万円、ボーナス資金の追加投入など総額で約500万円、これを軍資金として、現在の私の所有株式総数は約1,200万株、純資産30億円である。平成元年バブル景気最盛時、すなわち日経平均38,915円をつけたその翌年には、一時80億円超の時価を記録した。今日その時価総額は約半分弱になっているが、この金額は、私が今天命を知る年齢を過ぎ、今後の人生を20数年と考えると、1年で1億円、1ヵ月に1,000万円使っても、使いきれない金額である。

 次に遠藤氏の運用スタイルを確認するため、著書の前書きを抜粋し引用する(一部筆者が加筆)。
1. 現在赤字会社であること、長期投資に徹すること
2. 発行株は少ないほうがよい
3. あくまでも低位株を狙うこと
4. 一株当たりの実質株主資本が時価を上回るものであること
【要はPBR1倍以下】

 遠藤氏は、運用資産1,000万円達成後、5年かけて1億円を達成している。それまでの足取りは、以下の通り。
1. 日本化学を20万株80円で買って200円超で売り、1,600万円を4,000万円に(購入後半年、250%)。
2. 住友石炭を25万株160円で買って300円で売り、7,500万円に
(購入後1~2年、88%)
3. 伊藤万を30万株250円で買い340円で売り、1億円を達成
(購入後半年、36%)
 このようにして運用資産1億円達成後、昭和56年から57年にかけ、一時的な株価下落から時価1億円を5,000万円に減らす(銘柄はオオトリを50万株、郷鉄工を30万株)その後は3年間持ちこたえた結果、株価は買値の3倍になり売却、資産は3億円に増えた。

 同著で説明されている遠藤氏の投資手法は、当コーナーでお勧めしている低位バリュー株投資戦略と重なる部分が多い。逆に大きく異なるところは、以下の4点である。
I. 意図した銘柄分散をしない
II. 株主資本比率を勘案しない
III. 配当を勘案しない
IV. 投資対象を、東証1部に限定しない
(ただし運用資産1,000万円達成後、5年間かけて1億円を達成する過程では、投資対象は東証1部銘柄。その後一時的に運用資産を半減させることになるのは、大証2部銘柄)
 低位バリュー株投資戦略よりも個別リスクを大きく取って「勝負」しているのが特徴である。このようなやり方による成功事例もあるということを紹介させていただく。(渡辺幹夫 2007.07.31)


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