商家秘録 その4


六 長思い入れの建て様
長思い入れ とは米の全体をみて、相場の発会より納会までの見込みを考え、売買を仕掛けることである。豊作凶作、米の出来不出来、ならびに天気人気を考え合わせ、相場師たちの策略はまちまちであるが、重要な点を把握し、自分の心を依怙贔屓なく天地の間に一点の曇りもない状態にして相場の見込みを立てるべきである。

さて、この相場は上がるか下がるかを察して、売買は前段で述べたように、予め損金を決めて仕掛け、相場が自分の思惑通りになったら五~七分のうちに利乗せするべし。

だんだん利乗せして利益になった時は、自分の見込いっぱいに利食いしようと思うものだが、その七~八分で手仕舞いするべきである。

損になったら、予め決めておいた損金に達しないうちに思案して、迷わず過ちを改め損切り手仕舞いしなければならない。

自分の思惑が間違った相場を、無理に取ろうとするのは天理を人力で抑えようとする無駄な事である。
相場の高下は人力の及ばざることと納得して、速やかに過ちを改めるべきである。

七 思い入れ掬い仕様の事
相場の見込みが立ち、五匁、十匁、一割の高下を見込んで売買を仕掛けるのは長思い入れ(大勢張り)である。
しかし、十匁上がる米も五匁上がって二匁下がり、一割上がって四、五歩下がってから、また上がることは相場師の常識である。
その場合、連騰した時、または続落した時に見当をつけて、一匁、二匁の利食いを心掛けることが思い入れ掬いである。

このやり方は相場の日足を見て考え、上げかかる所、下げかかる所を仕掛けるのは勿論であるが、連騰して止まった所で二匁ほどの押し目があると思う所でも仕掛けてみる。
思惑が外れ、さらに五、七分の上値があれば難平してもよい。それでも上げ続ける場合は日足を見て、損切り手仕舞いすべきである。

仕掛けから難平した所から思い通りになってきた時は、三~五分の間に利乗せするべきである。古来と違い人々は勘定高くなっているから、早い利乗せが肝心である。

一匁上がった時、なお二三匁上がりそうだと思っても、一旦振るい落しがあった後、思っていた値段になることがよくある。
これを考えて一匁も利益になった時、日足的には納得できなくても、思案して、
今 手仕舞いすれば利益になるが、これを取らずにもう少しよけいに取るか、仕掛値まで持ち堪えて利益を捨てるか、三つの内、どれを取るべきかであるが、まず一匁の利益を確保して手仕舞うのが安全である。

持続した場合に、思惑通りの振るい落しがあれば、止まる所を計って油断しないことである。
止まらず、納得できないときは早く見切るべきである。

これが思い入れ掬いの概略である。
五日 三日の日足の足取りと、相場の様子を見て掛け引きする 思い入れ掬い という手法である。
下げで利益を狙う場合も、上げに準じて考えればよい。




  相場戦略研究所 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1289/