商家秘録 その5


八 掬い商い異見
掬い商いは腕に覚えのある上手い相場師が、一日の高下を考え、五厘、一分の当座の利を取るもので、多くは相場仲買人の熟練者が逃げ場を決めて油断なく行い、これによって渡世するものである。

とはいっても、外部より、仲買店に注文を委託し、手数料を払っての掬い商いは好ましくないことである。
少ない利益を取って素早く相場から撤退できなければ、掬い商いにならず、外部の人間では市場で場立ちをすることはできないから、その手筈が合わない。

また、うまく行って利益がある時でも、雑用が多くかかる割には利益が少ない。
しかも、それ以外の時は損失になるのであるから、よく考えるべきである。

もし、大勢張りの建玉を持ち、高下いずれにも行かず退屈な時、買い建てならば売り掬い、売り建てならば買い掬いを行う。
うまくいくようなら、これを何度も繰り返して利益を積み重ねる。もし、損になっても大勢張りの建玉を減らせばよい。
しかし、こうした安全な方法でも、大勢張りの建玉を持ったまま掬い売買を行うのは、本来は好ましくないことである。


九 難平商い異見
利食い難平というのは、売買を仕掛けて利益なれば小枚数で利食いする。
損になれば増し玉して平均を取り、損をしないようにすることである。

相場は値が行ったり来たりするものだから、十回のうち九回は利益になるものである。
しかし、十回のうち一回の相場の大波を食えば、身上に拘る大損をするものであるから、米相場師の嫌うものである。

難平に熟練した者は別であるが、初心者はその真似をしてはならない。






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