相場の道


松村辰次郎の父上、松村忠七は
「相手の人にも利食いの余地を残して手仕舞いせよ」
と早めの利食いをするように松村辰次郎に教えていた。
(林輝太郎先生の「相場の道 松辰遺稿・現代語訳注」より。P.133)

自分も今までは1円でも高く売ろうと汲々としていたのだが、
実際に「相手の人にも儲けてもらおう」と思って早めに利食いしてみると、
その後、高値があっても不思議なことに悔しくないのである。

これは明治の相場師たちの智慧・常識で、
そう思って早めの利食いをすることで、結果的に
 恐ろしい相場から自分の身を守る ことができる。
それを彼等は知っていたから ではないかと思う。

普通の商売では「自分の商品を買ってくれたお客様の幸せを願う」というのが商道徳にかなう考え方であるのに、相場の商い にそうした考え方を持ち込まないというのは、むしろ、おかしいといえよう。
自分が早めに仕入れた玉が値上りして転売した。その玉を買ってくれた人がさらに高値で転売して利益を上げることができたというのは、将に徳商いであり、本来喜ばしいことなのである。

林輝太郎先生が松辰遺稿のタイトルを「相場の道」としたのは、人の道に従った売買を説いている松村辰次郎に共感する部分があったから であるような気がする。



  相場戦略研究所 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1289/